自己開示と自己呈示について
夫婦円満の秘訣を探すなら、時には心理学的なアプローチをしてみるのも効果的です。
夫婦という関係は考えてみれば不思議なもので、それまで血縁関係になかった二人が突然夫婦という家族関係を自分たちの意志で獲得することになります。
人の性格は生まれつきの遺伝子としての要素はあるものの、環境的な要因もかなり深く関係して決定されます。
この環境が全く異なるところで成長をしてきた二人が、突然同じ生活基盤を持っていくことになるのですから、それまで自然に理解してきた「家族」の形とは全く違ったところから新しく構築をすることが求められます。
夫婦生活においてその場所を「落ち着ける場所」にすることができるかどうかの分かれ目として【自己開示】と【自己呈示】の問題があります。
これはいずれも心理学用語ですが、簡単に説明をすれば【自己開示】とはいわゆるありのままの自分を言語で伝えることをいい、【自己呈示】とは反対に自分で周囲から見られたい自分像を作り上げることをいいます。
生まれつきの家族の場合、それこそオシメをつけてご飯を食べさせてもらうところからの人間関係なので、会話の前提になっているのは【自己開示】です。
ところが新しく構築する家族である夫婦関係の場合この【自己開示】よりも【自己呈示】を適切に行なっているところの方が長くうまくいく関係にしてくことができるとされているのです。
良い意味での【自己呈示】の欲求
良い面も悪い面もすべて含めて相手に受け入れてもらいたいとするのが【自己開示】ですから、それに比べてある意味では自分の中の一定部分を隠そうとする【自己呈示】は不健全なもののようにも思えます。
ですが特に男性の場合においてはこの【自己呈示】がうまく配偶者である妻に働いているかどうかが、本人にとって家庭をいやすい場所にすることができるかの分岐点になるのです。
逆に女性の場合は【自己開示】をしたいと願う人の方が多いとされており、まずその違いをしっかりと踏まえることが円満な夫婦生活の第一歩になります。
男性からの【自己呈示】の例としては、「頼りになる夫」「社会的に尊敬を受けている夫」といった自分の権威を保つためのものがあり、世間体や見栄、体裁といったような部分がきちんと自分の周りで機能しているかどうかといったところが重要になってきます。
これは悪いことのように聞こえるかもしれませんが、必ずしもありのままの自分を見せることが本人にとって心安らぐ状態になるというわけではありませんから、その微妙な距離感を保つことができるかということが【自己呈示】を望む気持ちの根本にあります。
相手と自分の願望の違いを理解して
長年仲良く連れ添っている夫婦さんを見ると、あまりお互いのことに干渉しすぎていないことが特徴の一つになっているように感じます。
年をとっても仲良さそうに並んで歩いている姿はとても微笑ましいですが、それは決してどちらかのペースが完全に優先されているわけではなく、お互いに歩幅を合わせるようにしていることがわかります。
女性目線からでは「どうしてそんないちいち見栄をはるようなことをするんだろう」とか「本心を明かしてくれないのは信用されてないの?」というふうな気持ちになってしまうところですが、それはいらない心配です。
相手は相手であると歩幅を理解してあげることが、長年一緒にいるための大切な方法になります。