フランスは日本人にとって「行ってみたい海外旅行先」として毎年必ず上位にランクインするほどの人気の国です。
ですが地理的な条件があるためか、案外フランスという国内で行われている政策や文化についてはそれほど深い知識があるわけではありません。
フランスをはじめとするヨーロッパの国々は日本のような「家」をもとにした家族制度ではなく、「個」を基本にした個人主義の思想で成り立っていますが、それは婚姻制度にも非常によく表れています。
日本でも社会問題として何度も取り上げられている少子化は既にヨーロッパ諸国ではかなり進行していましたが、それに対応するべく少子化対策は各国それぞれ行われてきました。
その中においてもフランスは特に成功をしたモデルとしても挙げられることのある国です。
参考>>フランスの婚姻・家族制度
日本でも少子化対策をフランスにならうべきというという意見もありますが、正直なところ「結婚」や「恋愛」にたいする価値観がそもそも一般的なフランス人と日本人では大きく異なっているので、そのままの通りにやったからといって決してうまくいくとは思えません。
ただ、これまで当たり前のように扱われてきた認識をいまいちど見直し、結婚や夫婦生活についてよりよい状況を作り上げていくための参考としては大いに学ぶべきものがあると言えます。
日本でもしばしば取り上げられる「婚外子」の問題ですが、これについてはフランスはかなり緩やかな扱いをしています。
日本では結婚をしていない男女の子供は、婚姻中の子供と異なる取り扱いがされるよう定められていますが、フランスにおいてはその差は全くなく同等なものとして社会的な地位を得ることができます。
というのもフランスでは「ユニオンリーブル」という自由縁組制度が設けられており、同棲中のカップルなど法的な婚姻関係にない男女であっても家族として取り扱いがされているのです。
この制度ができてからフランスの事実婚は急増し、1970年には6%であった結婚していない子供である婚外子が、1980年台までのわずか10年あまりの間で52%となんと半数以上にまで増えました。
ということは街で出会う若者の2人に1人以上は婚外子ということになりますから、社会的にも全く引け目を感じることなく生活をすることができるようになっています。
こうした事実婚の場合子育てへの影響が心配されますが、フランスでは少子化対策の一貫として3人以上産んだカップルへの手厚い補助制度や、保育サービスの充実などを行っているので仮にシングルマザーとなった場合でも貧困の危険を感じることなく子供を育てていくことができるようになっています。
こういったフランスの様子を知ってみると、「これは日本では無理かな」と思う反面で羨ましくも思える部分もあったりします。
もちろんこうした政策には必ず裏側の何らかのしわ寄せになる部分は出るものですが、それでも結婚をすることで「家」や「家庭」のために没個性になることなく、自分の人生を自分のために生きていくことができるフランスの意識はとても素晴らしい文化の一つであるといえます。
日本ではまだまだ結婚をした女性は家庭のために尽くすものという意識が根強く、自分のための行動をすることを厳しく咎められる傾向があります。
それも大切な一つの文化ではありますが、もしそんな「家庭のための妻」という役割が重荷に感じられるようになったときには、こうした全く違った価値観の国のことを考えてみるのもよいかと思います。