夫婦生活が長くなってくると、ついつい最初はあったはずの緊張感がなくなってしまい、付き合っていた頃には絶対に口にしなかったような言葉も使ってしまうようになります。
いくら夫婦となったといってももともとは他人ですから、ちょっとした瞬間に出た言葉に傷ついたり、決定的にお互いの距離を感じてしまったりするものです。
よくあるのが朝起きるときになかなか布団から出られない夫に対して「早く起きなさいよ!」「ぐずぐずしないで!」といった叱責をするような言葉です。
確かに朝の忙しい時間にいつまでも自分だけ寝ていられる様子は苛立たしいものですし、一刻も早く起こすという自分の義務を果たしたいという気持ちがあるのもわかります。
ですが妻からの叱責で自分を貶められるということは男性の自信を大きく喪失させ、夫婦仲を冷え込ませる心の距離を大きくしてしまうことになります。
まずは「親しき仲にも礼儀あり」という言葉を思い出し、普段の言動にあまりにも攻撃的な部分はなかったかということを省みてみましょう。
同居生活が長くなってすっかり気分が慣れ合ってしまっていると、「ありがとう」「ごめんなさい」といった当たり前の言葉もすっと出てこなくなってしまいます。
夫婦お互い様とはいえ、ものを取ってもらったり、頼んでおいた仕事をやってくれた、約束を守ってくれたというようなときに無言でそのまま過ごしていてはなんだか殺伐とした関係だけが進んでしまいます。
そうした感謝の言葉や謝罪の言葉はその時その瞬間にこそ必要ですが、しばらく使っていないとなかなかぱっとは出てきません。
そこで慣らし運転というわけではないですが、慣れ合った関係にちょっと礼儀を出してみるという意味でおすすめしたいのが「よろしくお願いします」という言葉です。
「よろしくお願いします」は何かをお願いするときに使う言葉ですが、日本語では他にもこれからの良好な関係を維持するための文句としてもよく使われます。
朝起きた時、あるいは結婚記念日や誕生日、新年明けたばかりのときなどちょっとした区切りのときに、お互いに「よろしくお願いします」を口に出してみることでお互いの関係を再認識することができます。
こうした言葉によるコミュニケーションは多くの場所で必要性が説かれているのですが、長年連れ添ったご夫婦さんなどの中には「うちはそんなこと言わなくてもわかっているから」というような意識でほとんど気にもとめないような素振りをされたりする方もいます。
ですが自分は「向こうはわかっているだろう」と思っていても、その真意が本当に伝わっているかどうかは相手にしかわからにのです。
もしかしたら口に出さないだけでずっと我慢をしていて、本当は嫌だなと思っていたり、やめてほしいなと思っているようなこともあるかもしれません。
「よろしくお願いします」という言葉は、要件を伝えるためのコミュニケーションでは必ず必要な伝達事項ではありません。
それをつけるかどうかだけでも相手とのコミュニケーションは大きく違ってきます。
たかが言葉、言わなくてもいい挨拶とは思わず、感謝や謝罪の言葉はできるだけすぐに積極的に使うようにしましょう。